は行

【は行】→パーリ語~本命星供(ほんみょうじょうく)

パーリ語
インドアーリア語圏に属する言語で、「聖典」を意味する。仏教初期から数百年に渡り、様々な仏教法典に用いられたため、膨大な文献が残された。主にスリランカ(セイロン)、ミャンマー(ビルマ)、タイ(シャム)で仏典に用いられた。
廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)
一般的には明治新政府が発布した太政官布告(慶応4年)、大教宣布(明治3年)などの政策により引き起こされた仏教施設の破壊を指す。
本来の目的は日本古来の神道文化を護るため、神道と仏教を分離させる事で神道優位の方向に導こうとする政策で、仏教排斥を意図したものではなかった。しかし、その後大規模な廃仏毀釈運動に発展し、全国各地で寺院や仏像などの破壊活動が行われた。とくに伊勢国(三重県)、美濃国(岐阜県)、薩摩藩(鹿児島県)では廃仏毀釈が徹底された。結果として寺を失った多くの僧侶が還俗し、軍属となる者もあった。廃仏毀釈運動がそれほど激しくなった背景には、江戸時代に寺院が様々な特権(寺請制度など)を持っており、堕落や汚職の温床となった事で民衆からの反発が大きかった事も原因の一つと考えられている。この運動は明治4年に終熄するまで続き、数々の貴重な仏教文化が失われる事となった。現在では修復された寺院や仏像仏具も多く、近代化された仏教文化は日本の社会に深く根付いている。
→神仏分離令、神仏判然令
白隠禅師(はくいんぜんじ)
日本臨済宗中興の祖。本名は白隠慧鶴(はくいんえかく)、貞享二年(1686)駿河国・原宿に生まれる。15歳で出家し、24歳で正受老人(しょうじゅろうじん)に参禅し、悟りを開き正法を継いだ。神機独妙禅師(じんきどくみょうぜんじ)・正宗国師(しょうじゅうこくし)。没年は明和五年(1769)、82歳。京都妙心寺の第一座となり諸国を遍歴、禅の大衆化、布教に多大な功績を残した。また、優れた禅画も数多く残している。
パゴダ
卒塔婆の変形として建立された仏塔やそれに類する宗教的建造物。または、仏塔のような多重塔。日本では主にミャンマーの仏塔を指す。欧州人が仏塔などの高い多重塔を見て、それを指して呼んだ言葉。
八苦(はっく)
人間のあらゆる苦しみ。人間の苦悩の原因となるもの。
「生・老・病・死」の四苦に愛別苦離苦・怨憎会苦・求不得苦・五陰盛苦の四苦を加えた八苦の事を指す。
→四苦八苦
初穂水(はつほみず)
若水(わかみず)に同じ。元旦の朝に最初に汲む水。
破門(はもん)
一般的な意味では師弟の縁を絶ち、門弟を追放すること。信徒としての資格を剥奪し、宗門から排斥すること。本寺においては先代が破門した尼僧、門徒、信者が少なからずおり、絶縁された縁の方もいる。
半僧半俗(はんそうはんぞく)
僧侶でありながら、俗人のような風体と生活をする事、またはその人。俗人と同じように妻帯し肉も食べる。親鸞がその原型とされ、悟りの智慧を指導する僧侶が不在の現代では、一般的にこのような形態の在家僧侶が望ましいとも言える。
びっす戎
高野山真言宗で僧侶になるために受ける授戒。びっす戎はその3日目に授かるもので、これを経て初めて僧侶となる事が認められる。
白衣観音(びゃくえかんのん)
三十三観音の一人で、吉祥を表し、息災延命、安産などを司り子どもの成長を見守る母の心に通じるとされる。清浄菩提心の生じる白処を象徴し「白処尊菩薩」とも呼ばれる。
→三十三観音
平常心是道(びょうじょうしんぜどう)
平常心とは「乱れない心」、日頃の生活をきちんと行う心構えを持つ事で培われる精神の事です。どんな状況でも心を乱さず平静でいるのは難しい事かもしれません。しかし、毎日の生活の中で、当たり前の事を当たり前にやる事、日々の何気ない事でも誠実・丁寧に行う事で平常心は育まれていくものなのです。
風雅(ふうが)
「詩経」の六義(風・賦・比・興・雅・頌)のうち、風と雅。文芸・書画・茶道など、みやびで風流なたしなみ。高尚で上品な佇まい。現在では芸術全般に用いられる事が多い。
不垢不浄(ふくふじょう)
汚れてはいないが、浄くもない。それを決めるのは人の価値観であるという事。差別や偏見を戒める教え。
藤原鎌足(ふじわらのかまたり)
藤原鎌足(614年~669年)は藤原家の始祖である。旧姓は中臣(なかとみ)であったが、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ→後の天智天皇)とともに乙巳の変から大化の改新に至る諸改革に携わった功績を讃えられ、天智天皇より藤原姓を授かったと言われている。鎌足の没後、藤原姓は第二子の不比等が受け継いだ。
→藤原不比等(ふじわらのふひと)
藤原不比等(ふじわらのふひと)
藤原鎌足(614年~669年)の第二子で律令国家成立期の政治家。通説では、藤原姓は嫡男である不比等(659年~720年・一説には天智天皇の落胤とされる)が継ぎ、以後不比等の系列が藤原朝臣姓を名乗る事を認められたと伝えられている。
また、五摂家の筆頭で公家の近衛家は、藤原忠通の長男である藤原基実(後に近衛基実に改名)が始祖とされている。
→藤原鎌足(ふじわらのかまたり)
仏性(ぶっしょう)
仏教の根本的概念の一つで、本来生きとし生けるもの全てに備わっているとされる仏の本性。衆生の仏となる可能性も指す。「空性」と同義。「一切衆生悉有仏性」(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)
→覚性・如来蔵
仏膳(ぶつぜん)
御仏(みほとけ)、またはご先祖様にお供えする精進料理の御膳。霊具膳(りょうぐぜん)。
仏名軸(ぶつみょうじく)
御仏・菩薩などの御名を記した掛け軸。
不二観音(ふにかんのん)
慈愛の相の観音菩薩と忿怒(ふんぬ)の相の仁王様は本来同一であり、仁王様が変した姿であるとされる三十三観音の一人。迷いや怒りを超越した絶対平等の境地へ衆生を導くとされる。
→三十三観音
普悲観音(ふひかんのん)
三十三観音の一人で、普悲とは満遍なく慈悲を与えるという意味。全世界を見下ろす山上に立ち慈悲・威徳をあまねく及ぼし衆生を救う観音菩薩。
→三十三観音
糞掃衣(ふんぞうえ)
糞や塵のように捨てられたボロ布を洗い、つなぎあわせて作られた粗末な僧衣。衲衣(のうえ)。
別當(べっとう)
諸大寺で寺務を統括する僧官。律令制下において、本官を持つ者が他の宮司の職務を兼任・統括する際補任された地位。
法印(ほういん)
僧位の最上位であり、僧正に相当する。法印大和尚位(ほういんだいかしょうい)の略。
本来は仏教と外道を区別し、仏が真理である事を意味したしるし。諸行無常(しょぎょうむじょう)・諸法無我(しょほうむが)・涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)を三法印とする。
法悦(ほうえつ)
仏の教えを聴き、それを信仰する事によって救いを体感した時の心に湧き起る喜び。うっとりするような深い喜び、陶酔。
→法喜
宝篋印塔(ほうきょういんとう)
宝筐院経の陀羅尼(呪文)を書いて収めた塔。五輪塔とともに、日本では墓碑塔や供養塔に用いられる石塔婆形式の仏塔を指す。本来は鉄製だったものが、鉄は腐食するため石造りのものへと移行していったとされる。方形の石を下から基壇、基礎、塔身、笠、相輪と積み上げたもので、笠の四隅に「隅飾り」と呼ばれる突起がある。また、密教の祖師、真言八祖のひとり不空三蔵(ふくうさんぞう)の「宝篋印陀羅如尼経(ほうきょういんだらにきょう)」が名の由来で「礼拝供養すれば、現世の災いから逃れ必ず往生できる」と説かれている。飾るだけで功徳があると言われる「宝篋印塔」は五輪塔と並び仏塔の二大主流とされています。
法師(ほうし)
仏教や経典に精通し、衆生の師となれるほどの学識や経験を備えた僧侶に対する敬称。男児の呼称としても用いられる。(例)一寸法師
→禅師、律師
法蔵比丘(ほうぞうびく)
阿弥陀如来が仏となる前、過去世にて、「世自在王仏」(せじざいおうぶつ)の元で出家し修行していた頃の呼び名。法蔵菩薩とも呼ばれる。
→法蔵
法灯(ほうとう)
この世の闇を照らす灯明のように、仏法が衆生を迷いから救済する意味としてのたとえ。または、仏前にともす灯火。高僧を指す事もある。
→法の灯(のりのともしび)
法服(ほうふく)
僧侶が身にまとう法衣や僧服。袍裳(ほうも),鈍色(どんじき),素絹(そけん),直綴(じきとつ)の4種が一般的な法服。または、法廷で裁判官が着用する制服。
→法衣(ほうえ)
法曼荼羅(ほうまんだら)
四種曼荼羅の一つ。梵字一字で仏を表す種子を用いた曼荼羅。種子(種字)曼荼羅とも呼ばれる。
→種子(種字)曼荼羅
法門(ほうもん)
「悟りに入る門」の意味で、仏門に入る事を指す。仏の教え・真理の教え。または教派の分類。
法力(ほうりき)
仏道を修行して身につけた超人的な力。仏法の功徳による力。仏法に本来備わっている力。
北斗七星法(ほくとしちせいほう)
北斗法、北斗供とも呼ばれる。天変、疫病、夭折などの災厄を除き、息災延命を祈願するために、一字金輪北斗七星を供養する修法。主に真言宗、天台宗で行われる秘法で、北斗曼荼羅をかけ、七星全部を供養する。
法華経(ほけきょう)
初期大乗経典の一つ。1〜2世紀頃「華厳経」などと同時期に成立したとされる。一切の衆生が必ず平等に成仏出来ると説き、また、この教えを広める行者は世間から迫害されると予言する「受難劇」の視点で語られている。天台宗(山門派・寺門派)・日蓮宗、日蓮正宗(法華宗)の各派は、「妙法蓮華経」「無量義経」「仏説観普賢菩薩行法経」(ぶっせつかんふげんぼさつぎょうほうきょう)の三部を「法華三部経」と呼び、根本の経典としている。
菩薩(ぼさつ)
仏の次位にあり、悟りを得て衆生を救済するため修行する人。一切の煩悩から解き放たれ仏となったが、応身化仏(おうじんけぶつ)として俗世に降り立ち衆生を導くと言われる。観音菩薩・普賢菩薩・文殊菩薩・弥勒菩薩など。徳を積んだ高僧を指す場合もある。または、神仏習合・本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)により日本の神々に贈られた尊号。
菩薩戒(ぼさつかい)
菩薩が受持する大乗の戒律。悪を収め、善を遂行し、利他のため衆生に尽くす。「梵網経」(ぼんもうきょう)「十重禁戎」(じゅうじゅうきんかい)「四十八軽戎」(しじゅうはちきょうかい)から成る。
→大乗戒・仏性戎
菩提薩埵(ぼだいさった)
菩薩のこと。一切の衆生を救済するべく、深い慈悲と大いなる志を持ち、悟りを開くために励む修行者。
法華宗(ほっけしゅう)
妙法蓮華経を所依とする仏教宗派。本来は天台宗の別称であったが、現在では日蓮宗の別称となっている。日蓮宗・日蓮正宗・法華宗真門流・本門法華宗など。
→本妙法華宗(ほんみょうほっけしゅう)
発心(ほっしん)
悟りを得て仏となる事を決心する事。菩提心を起こす事。仏道に入る事。または、物事を始めようと思い立つ事→「発起」(一念〜する、〜して勉学に勤しむ)
→発菩提心・発起
法身(ほっしん)
仏を法身・報身(ほうじん)・応身(おうじん)の三つに分類した三身の一。無心・無身・無行で、真理そのものとしての仏陀の本体、真実そのものとしての本体を表す。大日如来や阿弥陀仏など、真理そのものである仏を報身、俗世に実体のある化仏として生まれた釈迦を応身と呼ぶ。
→法仏・法身仏・法性身
法相宗(ほっそうしゅう)
中国仏教十三宗の一派で、日本では南都六宗の一つ。インドで学び、唐に帰国した玄奘三蔵が伝えた、ダルマバーラの瑜伽師地論(ゆがしじろん)・成唯識論(じょうゆいしきろん)等を原典とし、玄奘の弟子である窺基(きき)を開祖とする。この世の全ての存在の根源は「識」であると説く。
→慈恩宗、唯識宗
布袋(ほてい)
七福神の一人。本来は中国に実在した禅僧・釈契此(しゃくかいし)の事である。常に大きな袋(堪忍袋とも言われる)を背負い、大きく突き出た太鼓腹を特徴とした福々しい容貌を持っていた事から布袋と呼ばれるに至った。
本山派(ほんざんは)
京都聖護院(しょうごいん)によって統轄された天台系の修験教団。修験道の開祖を役行者(えんのぎょうじや)、派祖を円珍(智証大師)とし、宗派の基礎は平安末期に固められた。
本地(ほんじ・ほんち)
本来の土地、本国、当地。または本性、本体、本来の姿。
本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)
仏や菩薩を本地(本体)とし、神道の神々は衆生を救うために仏が姿を変えたもの(垂迹・権現)とする仏教優位の考え方。奈良時代の神仏混交に始まり、平安時代に成立した。神仏同体説。その後、明治政府の神仏分離政策が発布されるまで、日本社会における基本的な宗教観として定着した。
→神仏習合・神仏混交
凡夫(ぼんぷ)
仏教の真理に目覚める事なく、煩悩に囚われている人。異生(いしょう)。または平凡な人。
本命星供(ほんみょうじょうく)
個人の一生の運命を司る星で、生涯変わる事のない宿命の星、本命星(ほんみょうじょう)を祀る法要。主に密教(真言宗・天台宗)で行われる。星供養、星供(ほしく)とも呼ばれる。各年の開運除災のため当年星(とうねんじょう)を祀る法要も星供の一つである。