仏像豆知識

仏像には様々な種類があります。
また、人間の社会と同じように仏像にも階級や役割のようなものが存在しています。
仏像はおおまかに見て、役割が重要な順に如来・菩薩・明王・天と4つのグループに分類されます。
たとえば如来像一つをとっても、作者・年代・素材によってかなり異なる印象を持ったり、他の仏像との違いがよく分からなかったりする事も多いでしょう。
千手観音のように誰が見てもひと目で分かるような大きな特徴があれば良いのですが、一般的に仏教にそれほど造詣が深くない人であれば、仏像をひと目で〇〇だ!と判断するのは難しいかと思われます。
しかし、仏像を見分ける方法は、実はそれほど難しいものではありません。
どの仏像にも、よく見れば、ちゃんとそれと分かるような特徴が付加されているからです。
同じ如来像でも大日如来と阿弥陀如来は明らかに見た目が違います。
ここでは代表的な仏像をグループと役割から分類しその特徴を解説致します。

金剛界五仏

大日如来(毘盧遮那如来・マハーヴァイローチャナ)
パンチャ・ブッダ(金剛界五仏)の第一五仏であり、他の四仏の中心に座している。
ストゥーパと呼ばれる聖なる仏塔に置かれ、場合によっては仏塔自体が大日如来を指す事がある。この場合、中心に大日如来の姿は描かれない。
ヴァイローチャナは太陽神を意味し、毘盧遮那如来(びるしゃなにょらい)はその音写を漢訳したもの。
宇宙の根源的な要素であり、真理そのものであり、究極の智慧を持つ存在である。
千枚から成る蓮の花で構成された「蓮華蔵世界」の頂点に坐す。
その花びらには百億の世界があり、それぞれに釈迦がいると言われる。
後に密教的なスタイルが色濃くなってからは「大日如来」と呼ばれるようになった。
「金剛界曼荼羅」と「胎蔵界曼荼羅」のいずれにも中心として描かれ、手の印相(金剛界=智拳印、胎蔵界=法界定印)で区別される。
他の如来と異なり、スマートで、頭には宝冠を戴き、臂釧(腕輪)や瓔珞(胸から腰に垂らす飾り)を身につけた貴族的スタイルが特徴である。

※「ストゥーパ(stûpa)」は、仏舎利(骨壷)を収めるインドの墓所。饅頭のように盛り上げられた塔のような形が特徴で、サンスクリット語の音写を漢訳したものが「卒塔婆」である。漢に伝わり、木造建築の影響を受けたものが日本に伝播し、五重塔や三重塔などの建築物となった。

阿閦如来(アクショービャ)
阿閦如来(あしゅくにょらい)は五仏の中で2番めに重要な仏とされ、大日如来を中心に東方のアヴィラティー(妙喜国)に住む。
一切をありのままに見ることが出来る「大円鏡智」を具現化したものとされ、金剛座に坐っている。
印相は右手の甲を外側に向けて下げ、指先で大地に触れる「触地印」(ブーミスパルシャムドゥラー)を結ぶ。
象に乗り、五鈷杵をシンボルとし、意識(ヴィジュニャーナ)という宇宙の根源的な要素を表す。
宝生如来(ラトゥナ・サムバヴァ)
宝生如来(ほうしょうにょらい)は五仏の中で3番目の仏であり、大日如来を中心に南方シュリーマット(極妙国)に住むとされる。
四菩薩を眷属とし、宝物をもたらし福徳を授ける。その智慧は、すべてのものが平等であると説く「平等性智」である。
摩尼宝珠をシンボルとし、印相は、左手の開いた掌を膝の上に置き、右手に財物を施す「与願印」を結んでいる。
阿弥陀如来(無量光如来・アミターバ)
阿弥陀如来は五仏の中で最古の仏であり、西方極楽浄土に住むと言われる。
深い瞑想状態を表す「禅定印」(ディヤーナ ムドゥラー)を結び、孔雀に乗る。
無量の光を表す「アミターバ」から阿弥陀如来と訳されるようになった。
無限の光明で衆生を照らし、極楽浄土へ導くと言われる。
極楽浄土へは誰でも往生できるが、生前の行いによって9種類のランクに分けられる。これを「九品」という。
九品は「上品」「中品」「下品」の三段階から成るもので、それぞれに「上生」「中生」「下生」という3つの分類があり、合計で9つとなる。
脇侍として右に勢至菩薩、左に観音菩薩を従える。その智慧は、物事を正しく観察し判断する「妙観察智」である。この「妙観察智」によって、生きとし生けるもの全ての心を平安へと導くことが出来ると言われている。
不空成就如来(アモーガシッディー)
この仏は釈尊と同体とされ、北方のカルマクータ(業積国・ごうしゃくこく)に住む、五仏の中で5番目の仏である。
すべての恐れを取り除く象徴である「施無畏印」(アバヤダーナ ムドゥラー)を結び、ガルーダに乗る。
その智慧は、全ての衆生に智慧を与える「成所作智」である。

菩薩

観音菩薩(アヴァローキテーシュヴァラ)
菩薩の一尊であり、観世音菩薩または観自在菩薩と呼ばれることもある。勢至菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍として、如来の左側に位置する。
「仏の慈悲」を象徴し、全ての衆生を救うまで涅槃に入らないと誓いを立てたとされる。
そのため、一定の形を持たず、人々の要望に応じて様々な姿に变化する。人間の姿から如来の姿まで三十三の姿に变化出来ると言われており、「三十三応現身」と呼ばれる。
勢至菩薩(マハースターマプラープタ)
菩薩の一尊であり、大勢至菩薩または得大勢至菩薩と呼ばれることもある。観音菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍として、如来の右側に位置する。
観音菩薩が「慈悲」を象徴するのに対し、勢至菩薩は「智慧」を象徴すると言われている。
文殊菩薩(マンジュシュリー)
菩薩の一尊であり、文殊師利菩薩または妙吉祥菩薩とも呼ばれる。
普賢菩薩とともに、釈迦三尊として釈迦如来の脇侍をつとめる。
一般に智慧を司るとされ、「聖なる智慧の菩薩」とされる。文殊の智慧とは「知識」のことではなく「正しく物事を見極める力」の事である。
信仰する者に、深い洞察力・精神力・知性・雄弁さといったご利益を与えると言われる。
また、その像容は獅子の背に置かれた蓮華座に座し、右手に智慧をあらわす宝剣、左手に経典を乗せた青蓮華を持ち、甲冑をまとった勇壮な姿や清廉な童子の姿で表されることもある。
普賢菩薩(サマンタ・バドゥラーユス)
菩薩の一尊であり、普賢延命菩薩とも呼ばれる。
文殊菩薩とともに、釈迦三尊として釈迦如来の脇侍をつとめる。
一般に現世利益・除病延命・仏道成就を司るとされ、「行の菩薩」であり、菩提心の象徴とされる。
その像容は、六牙の白像の背に置かれた蓮華座に座し、合掌する姿であらわされる。
また、密教では左手に五鈷鈴、右手に五鈷杵を執る姿で表される場合もある。
虚空蔵菩薩(アーカーシャ・ガルバ)
無限の智慧と財宝を司る菩薩。
弥勒菩薩(マイトレーヤ)
釈迦入滅後、56億7千万年後の未来に衆生を救うために現れるとされる未来仏。
その時のために、兜率天において菩薩行を行うとされる。