顕教と密教の違い

大乗仏教には大別して「顕教」と「密教」の2種類があります。

顕教(けんぎょう)
衆生を教化するため、「応身」した釈迦如来が言語や文字で明らかに説いて示した教え。密教の対義語。
また、真言宗では釈迦の説いた教えを言い、天台密教では「一乗」に対して「三乗」の教えを言う。顕宗。
空海が密教優位性の観点から分類した「教相判釈」のひとつである。
⇔密教
密教
真理そのものである「法身」の大日如来が説いたと言われる。顕教の対義語。
深奥な教えであるために、難解で容易には明らかに出来ないとされる秘密の教え。
現在の仏教学では後期大乗仏教に分類され、「後期大乗」とも呼ぶ。
空海によって分類された教相判釈のひとつ。
⇔顕教
◆応身
衆生を教化・救済するために顕現した仏の姿。釈迦・菩薩など。
法身・報身・応身の三身の1。
救済対象の素質に応じた姿で現れると言われる。現身。応化身。
◆法身
真理そのものとしての仏の本体。色も形もない真実そのものの体。
法身・報身・応身の三身の1。法仏・法身仏。
◆一乗
大乗仏教で仏となる事の出来る唯一の教えを指す。一仏乗・仏乗とも呼ばれる。
一は唯一無二、乗は衆生を乗せて仏果に運ぶ教法の意。
◆三乗
大乗仏教において「乗」は乗り物であり、人間が悟りを開くための乗り物(=教え)を意味する。
声聞乗・縁覚乗・菩薩乗の3種類に分類され、各々能力の異なる対象のために異なった教えがあるとしている。
◆声聞乗(しょうもんじょう)
仏の声に導かれ、自己の悟りのみを目的とする声聞のために説かれた教え。
三乗の中で最も低位とされる。
◆縁覚乗(えんがくじょう)
ひとりで悟りを開くための教え。
声聞と縁覚は自己の悟りを求める修行であり、「自利」とされる。
◆菩薩乗(ぼさつじょう)
三乗の中で最上位とされる。
自らが仏となるだけでなく、全ての衆生を悟りに至らせるために説かれた教え。
仏乗・大乗。
自己のためならず、他者のために修行している者を指し、「自利利他」とされる。
教相判釈(きょうそうはんじゃく)
真言宗の開祖・空海が中国から密教を持ち帰り、一般的な大乗仏教より優れているという観点から比較分類された。
仏教の経典を内容によって高低を判定し解釈したものである。
顕教の経典:華厳経・法華経・般若経(一部をのぞく)・涅槃経等
密教の経典:大日経・金剛頂経・理趣経等
密教の教義
◆即身成仏
生きたまま仏になること。
人間がその肉体のままで究極の悟りを開き、仏となること。即身菩提。
主に真言密教の教義であり、空海の「即身成仏義」によって確立された。
天台宗・日蓮宗でも「法華経」において説かれている。
◆入我我入
身・口・意の三密行を行うことにより、如来の三密が自分の中に入り、自分の三業も如来の中に入り、両者が一体の境地となる事。
即身成仏へ至る道でもある。